ケアマネジャーとして介護保険制度の知識を自分の身につけるコツ

株式会社ケアレジェ 代表取締役、主任介護支援専門員、介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士
高松 誠

セミナー講師と介護支援専門員の両方を職業としています。一生ケアマネジャーとして活動することを宣言しております。

アウトプットこそ介護保険制度の理解に必要

ケアマネジャーの効率化と真のサービス向上を目指す

前回のコラムで執筆させていただいた内容は、多岐にわたるため、前後編に分けてお届けしました。今回、その続きとしてお話しします。

ケアマネジメントの質を保つためには、業務効率化が不可欠です。細かい情報を書類に記載しても、それが利用者の生活の質向上に繋がらないこともあります。介護保険制度の知識が不足していると、不必要な作業に多くの時間を費やすリスクがあります。

例として、ケアマネジャーが通院時情報連携加算に際し、利用者を社用車に同乗させる行為や居宅サービス計画書第2表に不要に記載することが挙げられます。利用者を社用車に同乗させることは、ケアマネジャーの業務範囲を超える行為です。制度上、通院時情報連携加算を第2表に位置付けることは設定されていません。全利用者に対して、半年ごとに同一事業所の提供割合を説明することが見受けられますが、この情報は居宅介護支援の開始前に1回説明するだけで十分です。また、軽微な変更にも関わらず、アセスメントツールを不要に使用して記録に時間を費やすケアマネジャーも中にはいます。しかし、軽微な変更の詳細な記録に時間を投じても、それは利用者の生活の質の大幅な向上には繋がらないのです。

介護保険制度の正確な理解とアウトプットの重要性について

ICTの活用による効率化は極めて重要ですが、介護保険制度を適切に理解していなければ、実際の運用は効率的になり得ません。前回は、介護保険制度の理解を深めるためのヒントを提供しました。今回は、その理解を活用する段階、すなわち「アウトプット」に焦点を当てます。

知識を「インプット」するだけでは、その理解の深さや正確さを確認するのは難しいです。アウトプットを実践することで、自らの理解度を検証し、理解できていない部分を特定し、再学習することで、知識の整理と強化が可能となります。

アウトプットの方法は様々です。例として、特定事業所加算を取得している場合、週一の会議で新しい知識をチームと共有することは効果的です。このような場での情報共有は、自らの理解をさらに深めるだけでなく、他のメンバーからの意見やフィードバックを受けることもできます。もし、朝礼が設けられている場合、それを利用して情報を発表するのも良いアイディアです。アウトプットの機会は、工夫によりさまざまな形で増やすことができます。

ケアマネジャーのためのSNSを利用したアウトプット術

SNSは現代の主要なコミュニケーションツールとして位置づけられています。今や多くのケアマネジャーがスマートフォンを手にしており、SNSのプラットフォームもFacebook、note、アメブロ、X(旧Twitter)といった多様な選択肢が存在しています。ケアマネジャーの中には「この制度の情報は常識ではないか、公開するのは適切か?」と疑問を持つ方もいるかもしれませんが、主要な目的は自らの知識のアウトプットです。その観点からすると、SNSを通じての情報発信は大変価値があります。公開に抵抗がある場合は、匿名や別名義でのアカウント作成も検討できます。情報をアウトプットすることは、介護保険制度の知識をより深く、しっかりと身につける効果的な手段です。

LINEのグループ機能は有益なツールと言えます。職場や地元のケアマネジャー同士で初めにLINEグループを作り、「介護保険制度」や「運営指導対策」に関する情報交換を進めましょう。2〜3人からのスタートでも、参加者が増えれば大きなネットワークが形成されます。

このグループを通して、情報収集や伝達のスキルが向上します。新しい介護保険制度や、以前は曖昧だった内容、ローカルルールなどをグループで共有することができます。メンバーが介護保険制度に関して疑問や困難な解釈を持っていれば、気軽にグループで共有し、共同で情報を調査・共有することができます。この過程で、検索力や説明力が養われます。結果として、自身のスキルが向上し、参加者全員が利益を得るwin-winの状態が生まれます。少人数からスタートしたLINEグループは人の紹介などで増えていき、大きな情報ネットワークが形成されることでしょう。

筆者も3名からスタートしたLINEオープンチャットで『ケアマネジャー運営指導対策』のグループを数年前に立ち上げ、現在では大きな宣伝を行っていないにも関わらず160名を超えるメンバーと介護保険制度を中心に情報交換を続けています。

ケアマネジャーのアウトプット力強化 〜セミナー講師への道のり〜

アウトプットの究極の形は、セミナー講師としての活動になります。スタートとしては、職場内の小規模なセミナーから試みるのが良いでしょう。緊張することは自然ですが、経験を重ねることで自信も育まれます。小規模だとしても研修資料の整備は大切にし、指定された講話時間内で適切に進行し、質疑応答にも応じることが大切です。その場で即答できない質問については、後日調査し、回答を提供します。

次のステップとして、地域包括支援センターや町内会での講演を検討することができます。地域住民とのコミュニケーションを大切にし、信頼関係を築くことで、新しい顧客の開拓や地域への貢献が期待できます。また、地域住民からの予期しない質問に答える経験は、知識の深化やアドリブ能力の向上に役立ちます。さらに、地域の職能団体や他の法人を対象としたセミナーの実施、そして将来的には自治体規模、県規模、最期は全国規模のセミナー講演も視野に入れることが推奨されます。

介護保険制度は、その複雑性と広範な内容から、理解や習得が難しいとされます。情報の単なる収集だけでは、深い理解には至らず、具体的なアウトプットが必要です。この観点から、『ケアマネジャーを紡ぐ会』に継続的に参加し、ネットワークを広げながら、アウトプット重視の活動を推奨します。今後も、共に学び、成長していく旅を楽しみましょう。私も、新たな仲間たちとの繋がりを心から楽しみにしております。