課題整理総括表の活用 後編

合同会社鐵社会福祉事務所 代表社員
てつ福祉相談室 管理者
鐵 宏之

前半では課題整理総括表が開発された背景や活用場面について解説しました。
後編では課題整理総括表そのものの構造や活用のポイントを解説します。

課題整理総括表は大きく分けると左側と右側になります。よく見ると表は繋がっておらず左右で分けられていることがわかります。左側はアセスメントで得られた情報を「整理」するために用いられます。右側は左側で整理した情報をもとに思考を整理し総括するために用いられます。

作成日

課題整理総括表の右端には作成日及び利用者、家族の意向の記入欄があります。
これはシンプルに「課題整理総括表を作成した日」で構いません。
コラム前編のように課題整理総括表は振り返りのために作成することもあります。
ケアプランが過去、課題整理総括表が現在ということもあり得るためです。

利用者、家族の意向

課題整理総括表作成時点での意向を記入します。
ケアプランと一語一句同じになる必要はありません。
課題整理総括表はケアプランを作成するための情報整理の意味合いがあり、これをもとに利用者家族にわかりやすく記載するものがケアプランだからです。
また支援の振り返りに用いれば過去のケアプランでの意向と現在の意向が異なることもあります。その場合、意向の相違について考えてみると良いでしょう。

自立した日常生活の阻害要因(心身の状況、環境等)

この欄を理解するためには「要因」とは何かを考える必要があります。要因に似た単語として「原因」があり、2つの単語の立ち位置の違いの理解が必要です。
例えば「アルツハイマー型認知症」という疾病があります。これが「原因」となります。
問題を引き起こす根本であると理解すると良いでしょう。
「アルツハイマー型認知症による記憶障害」は要因となります。
原因によって引き起こされた次の状態、と考えると良いでしょう。
原因は介護支援専門員や介護職、看護師や理学療法士等には直接アプローチすることができません。医師のみが直接治療を行うことができるといえます。
要因は環境を整える、ケアを提供する等により改善を図ることが可能です。
「心身の状況」、とは本人の状態に起因するものです。
「環境等」は本人の生活の不自由さが必ずしも「心身の状況」に起因するとは限らないためです。例えば公共交通機関がない、制度の不備、家族の介護力等本人を取り巻く環境により、不自由さが生じていることがあるからです。
脳梗塞、骨折、認知症と記載するのは「原因」です。それによって引き起こされた状態を記載しましょう。

記入欄が①-⑥まであります。ここでは現在の状態を引き起こしている要因を記入しますが、1つのみでも構いませんし、6つでも構いません。7つ以上ある場合は欄外に⑦⑧と記入してください。

いきなり介護が必要となる方はいません。様々な理由により介護が必要な現在に至っております。原因→要因→結果のつながりを考えることができる項目です。

状況の事実

課題整理総括表はアセスメント表ではありません、厚労省の「課題分析標準項目」は全23項目あり、課題整理総括表はその一部が不足しているためです。
ADL、IADL、その他に関する項目からなっており基本情報や生活歴等は除外されております。

現在、要因

「現在」は状況の事実の各項目に対して作成者がどのように判断しているかを「自立、見守り、一部介助、全介助」または「支障なし、支障あり」から選択します。選択基準は作成者の判断であり、認定調査の内容を転記するものではありません。

「要因」は「自立した日常生活を阻害する要因」で記入した①~⑥の要因を意味します。ADL、IADL、その他の項目が「見守り、一部介助、全介助」または「支障あり」の場合はそれを引き起こしている「要因」があります。番号を要因欄に記入することで、現在と要因の関連を考えることができます。
「自立」「支障なし」の場合は要因は空欄となります。
なお、要因は必ずしも1つだけではなく2つ以上の複合した要因により現在に至っていることがあります。
例:「自立した日常生活の阻害要因」として①脳梗塞による左上下肢麻痺 ②右変形性膝関節症による右膝痛 ③エレベーターのない団地の3階 ④高血圧症による体調不安 ⑤生活保護受給による経済不安 ⑥独居による不安感

移動 室内移動 見守り  ①②
   屋外移動 一部介助 ①②③

改善/維持の可能性、備考(状況、支援内容)

介護保険証の認定有効期間における作成者の判断を記載しますが、課題整理総括表が開発された時期は、有効期間は長くても2年間でした。しかし、現在は最長48ヶ月ありその期間での改善/維持/悪化を判断するのは難しいといえます。厳密なルールは存在しないため、作成者が自由に期間設定をすることが可能です。

例:ケアプランにおける長期目標の期間
例:ケアプランにおける短期目標の期間
例:ケアマネジャーが自由に設定

改善や維持、悪化の見込みについて作成者の判断で選択します。予後予測の観点ですが、別のケアマネジャーや他職種によっては改善、維持、悪化の判断が異なることもありえます。それが良い悪いではなく、視点や専門性が異なることで判断が変わるということに気づくことができます。
備考(状況、支援内容)

課題整理総括表における数少ない自由記載ができる項目ですが、書きすぎずシンプルに記載することを心がけてください。なぜならば、課題整理総括表はサービス担当者等にアセスメントの過程を説明しやすくするためのツールだからです。つまり、説明を前提としているものであり、課題整理総括表を読むことで全て理解してもらおうというものではないのです。
私達は文字で他者に伝えようとするため、詳細で具体的に書くことが身についています。
しかし、課題整理総括表の自由記載欄は狭く、ここに具体的かつ詳細に書こうとするとフォントが細かくなってしまい読みにくくなってしまうためです。

例:在宅酸素を1L使用しているが10m歩行すると息切れが目立ちSPO2が90%まで低下する。
→10m歩行、SPO2 90%↓ HOT1L使用

長くなってしまったので、次回は課題整理総括表の右半分「思考の整理」に活用する項目を解説します。