ケアマネジャーの脱電話

合同会社鐵社会福祉事務所 代表社員 
てつ福祉相談室 管理者
鐵(てつ)宏之


■情報伝達に用いる電話は非効率です。

皆さん、1日の電話対応はどれくらいありますか。
利用者や家族、サービス事業所とのやり取りなど色々あるのではないでしょうか。事業所の人数が増えると他ケアマネジャー宛の電話を取り次いだりメモを取ったりと一日中電話で終わってしまうということを経験したことは一度や二度ではないのではないでしょうか。業界で日常となっている電話をしている光景を改めていく必要があると私は考えます。

図表1 平成27年度居宅介護支援事業所及び介護支援専門員の業務等の実態に関する調査研究事業より抜粋

図表1は、平成27年度のケアマネジャー1人あたりの1ヶ月あたりの業務時間を表しています。
この中で斜線部分が1月に占める電話の時間となります。担当数が30名を超えると15時間以上となっていることが分かります。実務では他職員の電話への応対、電話により業務の手が止まる為、実時間はこれ以上ではないかと思われます。
8時間勤務との場合、1日1時間以上電話をしている訳です。


電話の特性

電話が万能だった場合、FAXやEメール、SNS、Zoom等は普及していなかったでしょう。
電話ではできないことがあり、様々な情報伝達ツールが生まれたのです。図表2に電話の特性をまとめました。このように見ると、デメリットが多いことが分かります。
特に客観的情報を伝達できないこと、受け手側(聞く側)の想像に頼っていることにより生じる情報の不正確性が目立ちます。実務で言えば、ヘルパーから「お尻が赤くなっています。
仙骨付近に5cm程でうすいピンク色で」と報告があったとしても、電話では正確にはそれがどのような状態か分かりません。
不正確な情報を訪問看護や医師へ報告するのであれば情報が更に不正確になります。

相手の都合が分からない短所もあります。これにより電話に出られないということが起きます。相手が電話に出ないこともあれば、こちらも電話に出られず折返しをお互いに繰り返し、やっと電話が繋がったと思えば「今日デイサービス休みました」という報告だったときには大きなため息が出てしまいます。

そして、1対1の情報伝達しかできませんので情報のハブであるケアマネジャーは同じ情報を関係するサービス事業所に一つ一つ電話をする手間が生じます。

図表2


電話に頼らない仕事をしよう

電話は身近な情報伝達ツールですが、業務をするには短所が多いツールということをここまで解説しました。

脱電話の為に、まず対サービス事業所との情報伝達を電話以外の方法にすることを始めましょう。具体的にはFAX、Eメール、SMS、SNSの活用です。サービスの調整、報告程度ならば電話は不要です。
「事業所が電話してくる」という声も聞かれます。そのような時は一言「緊急の報告でなければ、FAXやメールでお知らせください」と伝えましょう。
ケアマネジャーが電話を使用するので、周囲の事業所はそのやり方に合わせてくるのです。

ケアマネジャーが変わることにより、サービス事業所も変わります。
3ヶ月意識すれば半減、半年続ければ電話は1/10まで激減します。「電話はマナー」「電話はコミュニケーション」と語っていたケアマネジャーが、かつてはいました。
しかし「マナー、コミュニケーション」というのは思っている側の主観であり、相手はそのように思っていないかもしれません。電話で世間話をしているケアマネジャーは相手の時間も奪っているという自覚を持つべきです。

電話を使うかどうかは「命に関わる緊急性がある」が判断基準にすべきです。
ケアマネジャーが急いでいることは基準ではありません。計画的に予定を組めていないといえます。
電話で慌ただしく連絡調整をするのではなく、様々な情報伝達ツールを場面と相手に合わせて活用することにより、一日電話対応で終わっていた働き方を変えることができます。

それによって生まれた時間を利用者支援、帳票作成、学びの時間等様々なことに活用でき、ケアマネジメントの質の向上に繋がるのです。

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