課題分析(アセスメント)と課題(ニーズ)の意味

合同会社鐵社会福祉事務所 代表社員

てつ福祉相談室 管理者

鐵 宏之

課題という言葉の意味

アセスメント(課題分析)と課題(ニーズ)という言葉をどのように理解しているでしょうか。

ケアマネジャーの業務でこれらの言葉を日頃から使用していますが、
曖昧に使用されている方も多いのではないでしょうか。

ケアプラン2表において生活全般の解決すべき課題(ニーズ)という項目があります。

ここでは課題(ニーズ)と同じ文中で使用されておりますので、課題=ニーズであると言えます。

課題という言葉を理解するためには、似た用語である問題という言葉との違いを理解する必要があります。

この2つの用語の意味の違いの理解が曖昧であると、ケアプランの本来の目的に誤差が生じてしまいます。

老企発第29号における課題

介護サービス計画書および課題分析標準項目の提示について(平成11年11月17日老企発第29号)別紙3
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)において

・生活全般にわたるものであること

・自立の阻害要因と利用者及びその家族の現状認識が明らかにされていること

と記載されています。

問題とは何か

問題という言葉は、「困った事柄」「厄介な事件」とされています。(出典 goo辞典)

利用者にとって問題とは、前述の老企発第29号に記載れる生活全般の自立の阻害要因であり、
現状認識=自立(介護が必要となる前と比較して困難であることといえます。

具体的には、足が痛い、腰が痛い、歩けない、食欲がない、体調が悪い、忘れっぽい
といった生活の困難さです。

課題とは何か。

課題という言葉は「解決しなければならない問題。果たすべき仕事」とされています。(出典 goo辞典)

利用者にとっての課題とは、『生活上の様々な困難な出来事を解決すること』と言い換えることができます。

問題で示した具体例で言えば、

・足が痛い→足の痛みを解消したい

・腰が痛い→腰痛を改善したい

・歩けない→歩けるようになりたい

・食欲がない→食事を美味しく食べたい

・体調が悪い→元気になりたい

・忘れっぽい→物忘れを治したい

となります。

このように課題とは問題が背景に存在することを示しており、問題の先に課題が存在しているといえます。

ポジティブプランという伝え方

法定研修(専門Ⅰ・専門Ⅱ)において、
講師が「ケアプランはポジティブに書いてください」という発言を聞いたことはありませんか。


生活全般の解決すべき課題(ニーズ)に「ポジティブに~したい。」と書いてください、
といった指導が各地で行われてきました。

これについては現在も、同様の指導がなされることがあると聞きます。

ポジティブプランという考えが生まれた背景

介護保険が始まった当初、
当時のケアマネジャーが、生活全般の解決すべき課題(ニーズ)に「~できない」と
利用者にとっての問題を記載していたと聞きます。
課題の言葉の意味を十分に理解していなかったのでしょう。

そのような背景から、課題の本来の意味をケアマネジャーに分かりやすく伝えるため、
「~したい」とポジティブに記載するように指導がなされたと思われます。

重要なことは書き方よりも課題分析の視点

平成24年3月株式会社日本総合研究所がまとめた「介護支援専門員の今後のあり方に関する調査研究 ケアプラン詳細分析結果 報告書」には次のような指摘がされています。

・ケアマネジャーが「~したい」という記述方法に捉われてしまい、課題分析が十分に行われていない

・課題分析を十分に行うことであり、記述方法はその表現の工夫

・画一的に「~したい」と表現にする指導は改める必要がある

課題だから単に「~したい」という書き方をしても、ケアマネジャー課題分析の視点を持ち作成しなければ、
そのケアプランの意図を十分に説明することができません。

ポジティブに書いただけの根拠のないケアプランになってしまう危険があります。

次回のコラムでは「課題分析」にフォーカスを当て、解説します。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です