失敗から学んだ居宅運営のコツ〜ケアマネの心地よさを追求した職場作り〜

ケアマネジャーを紡ぐ会副会長、岡崎市議会議員、株式会社わがんせ代表取締役
前田 麗子

主婦ケアマネから独立開業、開業時利用者0人から半年で新規依頼が途絶えない事業所になる。調子に乗ってケアマネを増やしたら、5年間で離職率50%!?
一人ケアマネ事務所のノウハウと、複数人在籍のケアマネ事務所のノウハウは全く違うことに気づいたのは数々の失敗を乗り越えて来たからです。
今回のコラムでは居宅介護支援事業所運営のノウハウ紹介を通じて、経営の勉強ゼロから2事業所運営の現在まで5年の間に経験した失敗から学ぶ、ケアマネの職場定着の秘訣についてお話したいと思います。

離職率50%の居宅経営から離職ゼロの職場へ!
その秘訣はケアマネジャーが心地よく仕事ができる
『環境』を整えることだった。

こんにちは、ケアマネジャー紡ぐ会副会長の前田麗子です。

現在愛知県で2ヶ所(岡崎市、名古屋市)で単独型居宅介護支援事業所を経営しています。2事業所ともに特定事業所加算を算定。
なんとか! 黒字経営をさせてもらっています。
また、「現役ケアマネ議員」として岡崎市議会議員として介護現場の声を行政に届ける活動もしています。

平成28年7月に愛知県岡崎市にあすなろケアプランを開業しました。
当時、ケアマネとしては2年半のキャリアでしたが、自宅マンションのたんす部屋を事務所に改造して、なるべく経費をかけず、
「ダメならすぐに辞めればいいや。」という軽いノリで独立開業しました。
開業当時、利用者0人からのスタート。
しかし、開業から半年間無我夢中で仕事をしたおかげか、開業から半年で担当利用者が常時35人オーバー。
新規依頼が止まらない、自分で言うのもなんですが、地元で評判のいい居宅介護支援事業所となりました。

その時、私は大きな勘違いをしていた。
「おっ!?私って居宅運営の才能あるんじゃね?」って。
で、調子に乗って、開業から2年が経過した頃から、拡大路線に切り替えて、ケアマネジャーを雇用し始めました。
しかし、そこからが悪夢の始まりで……。
最初に雇用したケアマネジャーは半年で退職、2人目、3人目は続けて働いてくれましたが、4人目も半年で退職、
5人目は1年で退職、6人目は4ヶ月で退職……。
もうね、夜も眠れないくらい、眠ったとしても夢にまで見るくらい悩みまくりました。
「どうしてうちの事業所はケアマネジャーが定着しないんだろう。」って。
いろいろと試してみました。
社員旅行を企画したり、ランチ会、飲み会、ノー残業……。
経営に関する勉強会に出まくったりとか、居宅経営の成功者の真似をたくさんしてみました。
本当にいろいろな事を試してみました。でもね、退職者が止まらないんです。
どうしたらいいのか、さっぱり分かりませんでした。
社長の私が至らない、というのは重々承知なんですけど、
ならば何をどう変えればケアマネジャーが定着するのか、ケアマネジャーたちが笑顔で仕事をしてくれるのか……。

ケアマネジャーの退職って、残る社員にとってはとても精神的なストレスがかかります。
退職する利用者さんのケースの引き継ぎは、通常の仕事に加えてやってもらう仕事となるため、心も体も疲弊してしまいます。
また退職を決めた職員が辞める日までの間、残る人と辞める人が一緒に仕事をする、
事業所の中はなんとも言えない雰囲気がありますよね。
“辞めるオーラ”を醸し出す人、なんなら新しい職場に仲間を引っ張って行こうとする人、
こっそり書類を持ち出そう!!とする人、やる気が全くなくなってしまう人。
私自身も退職が決まった社員と対峙することが辛くて、忙しさに逃げていた日々もありました。

そんなある日、ひょんなことから16人のケアマネを雇用しているA社長さんと知り合いました。
A社長もかつては従業員の退職が止まらず、社内の体制がガタガタになり、業績も著しく落ち込んでしまった時期があったそうです。
A社長も私と同じように夜も眠れないくらいに悩んだそうです。
どこかに職員定着のため、業績回復のための最適解があるのでないか?と探し続けた時、脳科学にその答えを見つけたというのです。

「脳科学を勉強して分かったのが、人間ってのは環境に影響されて行動が決まるということ。人間は基本的に変化を望まない生き物である、と言うことを前提にして考えなくてはいけない。
しかし、環境を変えてやることで、人間は少しではあるが行動を変えてくれる。経営者はすぐに職員を教育しようとしたがるけど、教育なんかで人は変わらない。環境を変えてやる、心地よく仕事ができる環境を整えてやることで、仕事のパフォーマンスが自然に向上するんだよ。」

結論から言うと、このA社長のアイデアを採用してから、うちの離職はゼロになりました。
“うちの会社が求める人材”が定着し始めました。
『コンフォート=心地よさ』を追求した結果でした。

人間のIQ は環境によって大きく左右される、だからうちも徹底して変えました。
ケアマネジャーが心地よく仕事ができるための環境を整える、具体的には……

ハード面
・おしゃれで清潔な事務所であること
・音楽が流れていること、自由にコーヒー紅茶などが飲める環境であること

ケアマネ業務面
・業務効率化をして残業ゼロを実現すること
(業務の標準化、業務の可視化、業務のルーティン化)
・休日はたとえ管理者でも電話に出ない仕組みを実現すること

会社の職場環境、制度面
・給与体系や評価体制が明瞭であること
・快適な職場環境、人間関係が構築できるよう採用時の選考に工夫をすること

そして、何より大切なのが、このやり方が自分たちの事業所に合っているか?ということです。
誰かの真似をしているだけでなく、実践しながら自分達のやり方にカスタマイズをしていく。
職場という字は「職+場」。どんな場にするか? 職員を変えようとしない、環境を変えるのです。

今回のコラムでは私自身の失敗から学んだ、前田麗子流の心地よさを追求した居宅経営についてお話しました。
もしリクエストがあれば、これについてもセミナーを企画しますね。
みなさま最後までお付き合いしていただきまして、ありがとうございました。