居宅介護支援事業所の主任介護支援専門員、認知症の人と家族の会世話人
係長ケアマネ
向上心は低めながら仕事が大好きなケアマネジャーで、座右の銘は“人生を楽しむ”です。
ストレスを減らしてケアマネジャーの仕事を楽しもう。
皆様はじめまして、私は四国の居宅介護支援事業所に所属しており、ケアマネジャーとして従事して今年で15年目になります。
本業の傍ら興味本位ではじめたTwitterで紡ぐ会の方々と繋がり、そのご縁がきっかけでコラムを書かせていただけることになりました。
今回、自戒と振り返りの意味を込めて、私が“ケアマネジャーの仕事を楽しむために大切にしていること”を書きたいと思います。
“楽しむ”の大敵は「ストレス」です。私はケアマネジャーをしていて、ストレスやイライラ、怒りなど負の感情を覚えた記憶がないのですが、同業者にこれを言うと怪訝な表情を浮かべる人が少なくないです。
というのも、比較的多くのケアマネジャーがこの仕事にストレスを感じたことがある様です。
私自身、なぜストレスを感じないのか、明確な答えには辿りついていないのですが、常に自分に言い聞かせている心構えが3つあり、それが下支えになっていると感じています。
その心構えは、下記の3つです。
1、「正しさは人の数だけある」
2、「受容力を高めろ」
3、「諦め力を高めろ」
1つ目の「正しさは人の数だけある」は、読んで字のごとくではありますが、“正しさ”は“価値観”に置き換えることもできます。
私が見聞きしているストレスの多くは、人と関わることによって起こっています。
そして、不思議なことに比較的多くの人が、“自分の考え方は正しい”と思っている傾向があります。
「正しい」が自分軸に偏ると視野が狭くなり、自分と異なる考え方が相対的に「誤り」になります。
それが摩擦/ストレス要因になる様です。
正しさは人の数だけある。ということを心得ておけば、“人の考え方も正しい。”と違いを認めることができ、異なる意見を持つ人も、感情的に指摘、批判してくる人も、本質的には“別の正しさを表明している人“と、フラットに捉えることもできて、対立構造が生まれ難くなります。
その他にも「上司はこうあるべき」「部下はこうするべき」「家族はこうあるべき」「医療者はこうあるべき」「あの様な態度をとるべきではない」「あの様な言動は慎むべき」など様々な独自の正しさ、〇〇であるべき論を見聞きしますが、正しさの基準は偏れば偏るほどストレス要因になり得ます。
人の言動に違和感を覚えたとき、それは全て自分の正しさ/価値観との乖離によって生じているとも言えます。
自分だけの正しさに固執することなく、正しさ/価値観の多様性を理解できれば、どんな人の言動も平常心でフラットに受け止めることができる様になり、それがストレスの軽減にも繋がるのだと思います。
2、「受容力を高めろ」は、“ノーマライゼーション”にも通じるものですが、人々のありのままを受け入れる姿勢を持つことです。
もちろん、人から言われたことをすべて受け入れて言われた通りにするという意味ではなく、“あなたの言い分は分かりました”と、しっかりと気持ちを受け入れ、それを言葉や態度で示すこと。
例えば、関係者から対応ができない要望や提案があった場合でも、
「貴重なご提案ありがとうございます。」
「お話の意図はよく分かりました。」
「現状では、その様に対応することができない事情があり、申し訳ないです。」など、
受容→共感→お断りの流れを作ることで、相手にとっては“要望は通らなかったが、気持ちは理解してもらえた”と部分的に理解者/味方という構図になり、わだかまりが残りにくくなります。
受容と共感を疎かにすると、お断り(拒否/否定)だけが強調されてしまい、”このケアマネジャーには理解が得られない、話が通じない”と相対的な敵対関係が生まれて関係性に溝ができてしまう可能性も出てきます。
利用者、家族、サービス担当者に対しては、相手にとって不本意な回答こそ丁寧に対応する。
一見綺麗事の様に思えますが、嫌な気持ちにならない様に自分の為にしていることです。
気のせいかも知れないのですが、その様に対応することを心掛けて以来、関わる人々が好意的に接してくれる様になったと感じています。
最後は、3、「諦め力を高めろ」です。
基本的には制度も人も、大きな変化が見込めない部分が多いです。
ケアマネジメント業務の中だと、非合理的で不可解なものもあり、不条理な状況に見舞われることもあるかも知れません。
また、心無い言動や態度をとる人、理解不能なことを言う人に出会うこともあるかも知れません。
それらに対して日常的に気を揉む必要はなく、変わらない事柄を諦めていくということ。
一つの事柄について考える場合、15分程度を上限として、それで結論が出ない場合は今考えるべきことではないと判断します。
変わらない事、ネガティブな事柄に思考を支配されることは、精神衛生上よくないので諦めて一旦忘れる。
忘れることができない人には、趣味でもなんでも別の事柄に取り組むことをおすすめしています。
もし、家に帰ってまで人や仕事のことについて、繰り返し考えてしまう様なことがあれば、それは黄信号です。
もちろん、制度も人もすべて諦めろと言う意味ではなく、変化が見込める事柄については具体策を立てて一つ一つ実行することは大切です。
考えるのは具体策だけ。
15分考えても具体策の立たない事柄は、一旦諦めるということです。
思考の方向性をシフトして、雑念を取り払うことがストレス軽減に繋がるのではないかと思っています。
今回は、私が大切にしている心構えを書かせていただきました。
すべてその通りにできているわけではありませんが、これからも3つの心構えを大切にして、ストレスを感じることなくケアマネジャーの仕事を楽しんでいきたいと思っています。
少しでも皆様のストレス軽減に繋がれば幸いです。