政治と介護を紡ぐ会会員
社会福祉士 介護支援専門員
忠岡町議会議員(大阪府)
三宅 良矢
現役ケアマネ視点でケアマネ業務や介護のあれこれを定期発信しています。
大規模化や集約化に傾いている介護や福祉の現実性から目をそらさずに、
小さな事業所は手を取り合って立ち向かっていきましょう。
日本の福祉は2000年の介護保険法施行以降、3つの変革時期を迎えます。
第1の変革は2000年介護保険法成立を契機とした、福祉の規制緩和に伴う民間開放です。
根底には、団塊世代ジュニアを中心とした就職氷河期世代の、低賃金で髙有能な人材が使い捨てることのできる社会状況に加えて、デフレ経済化の波に乗り規模が拡大してきました。
かくゆう私も就職氷河期ど真ん中!
バイト先の店長から「大学生の君にアルバイトで雇ってあげて、社会性を身につけさせてやるのだから、ちょっとやそっとの残業に給料を求めるなんて非常識だとおもえ!」と今じゃあり得ないでしょうが、当時としては社会的な常識の範疇であったかなと思います。
第2の変革は、2010年ころより日本人の人手不足が始まると、海外労働者を取り込みしのぐこととなります。友人が就労者と結婚して日本国籍を取得したら家を出ていった、東南アジアで年金10万円で豪華に余生を暮らす事がメディアに取り上げられたりなど、まだまだ、日本の魅力が観光ではなく経済的にメリットが多くある時代でした。
しかし、世界的な経済成長に伴い日本の相対的経済力が埋没する中で、日本人や海外労働者からも選ばれなくなっている状況を踏まえて『第3の変革』を迎えています。
一言でいうと『大規模集約化&効率化』です。
要介護以上の自宅で看てもらっていた高齢者は、規模が大きいサ高住などへ移ってもらい、事実上の施設内で効率よく面倒を見てもらう。
要支援までの高齢者は、大規模に集約された訪問介護やデイサービスなどで効率よくサービスを受ける。
理由は『配置できる人材がいないので……』と大義名分に掲げれば、国民は文句も言えまいと考えているのではないかと思います。
確かに小規模事業所がこの状況で奮闘し、市町村の事業所連絡会の情報交換程度の繋がりで何かを展開していくレベルでは、限界はすぐに見えてきます。
実際に介護施設などのM&Aを行う企業もあります。
介護業界以外でも、例えば葬儀屋や海外人材派遣業なども、小規模なところは閉鎖や縮小するところが増加しています。
この状況は効率よくなり介護や医療の制度自体の延命は図る事が出来る一方、地域の多様な取り組みなどの特色や独自性は消えていきます。
かといって小規模事業所がハイリスク覚悟で、借金を重ねてM&Aを行い大規模化していくことは、現実的ではありませんし、かえって倒産した企業を買い取っていくような既存の大規模企業の後押しでしかならなくなります。
だからこそ何をするのか……何ができるか……
今、大阪の南部地域の小さな事業所や企業が集まり『ゆりはか』という組織を立ち上げます。
介護や福祉関係だけでなく、コンサル・葬祭業・WEB制作会社、司法関係など、ゆりかごから墓場まで、高齢や障がいに限らず性別や年齢に関係なく、一定の地域で必要な支援サポートを、一つの組織体を中心に多くの参加事業所でサポートしあえる繋がりです。
一昔前に物語ではやった『スイミー』みたいなものです。
例えば、年齢・性別を問わない重層的相談支援体制を市町村は国から整備できるように促され補助金メニューも出ています。
しかし、ほとんどの市町村は、自身の市町村エリアでしか考えないので、頼れる事業所も限られてきます。頼られる事業所もいつも頼られてキャパオーバーや、事業範囲や規模により躊躇せざるを得ない状況です。役所独自でするのかと言えば、タテ割り行政から形を変えて組み込むだけですので取組む気配もありません。
「第3の変革」においては大規模事業所や企業か、大規模に巻き込んだ組織が地域の主導権を握ることになるでしょう。
時代の先を見据えて市町村に注文は付けるけど自身も動く。
求められる事は多く世の中にあふれています。