ニッセイ基礎研究所 上席研究員三原岳
福祉・医療制度改革を論じるコラムの第2回は最近、福祉・医療の政策論議で頻繁に語られる「生産性向上」を取り上げたいと思います。実は、今年の通常国会で改正された介護保険法では、生産性向上に関する自治体の役割が新たに明記されたほか、2023年度政府予算では、現場からの相談を受け付ける窓口を都道府県に置くための経費も計上されています。このため、今後は福祉・医療の現場で「生産性」という言葉を意識する可能性が一層、高くなると思われます。
しかし、生産性という言葉が語られる時、どこか効率性や採算性が重視される響きがあり、率直な感想として、患者や利用者を第一に考えなければならない福祉・医療に合わない印象も受けます。今回は「生産性向上」が重視されている事情や経緯、その論点などを考察したいと思います。
生産性向上とは何か
限られた資源の中で、一人でも多くの利用者に質の高いケアを届けることを目的とした取組であり、業務の見直しや効率化等により生まれた時間を有効活用して、利用者に向き合う時間を増やすなど、個人の尊厳や自立の支援につな...
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